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第151回 日商簿記検定2級の問3の連結会計の問題の炎上騒動を、自分なりに語ってみた ​

日商簿記試験2級が行われ、範囲外の出題がされたと絶賛炎上中だ。これについて思った事を語りたい。

簿記試験をやる意義

財務諸表を読む場合も書く場合も、仕訳がP/L、B/Sのどの部分に対応しているか?を意識することは大切で、これこそが簿記試験をやる意義であると俺は思う。

例えば「弥生会計」「会計王」などは仕訳を打ち込むと、ソフトウェア内のデータベース(SQLなど)が勘定科目別に合計・集計する処理を経て、各帳票(試算表、台帳など)に転記される。ここでレシートの項目を見て仕訳する際、「借方の○○の品物は研究開発費?消耗品?」と勘定科目の判断するのは人間である。ソフトは合計・集計をするだけで、資料の意味まで教えてくれる訳ではない事に注意されたい。

連結会計日商簿記2級に出題される背景は?

本題の問3に入る前に、日商簿記2級に連結会計の問題が出題される背景について触れたい。簿記2級に連結会計が出題される背景としては、企業の買収売却が目立つからだと考える。昨今「パイオニアが1,800億円で投資ファンドに買収された」というようなものから、M&A専門の経済ニュースサイト「M&A Online」までがある。

連結会計弥生会計」「会計王」などの会計ソフトに仕訳を打ち込んで財務諸表を書く人向けというより、上場企業のIR資料(Investor Relations)財務諸表を読む人向けの出題と個人的には思っている。

B/S上の純資産項目の仕訳、S/Sも重要

この他企業の買収・売却を読み解く上でよく出てくるのが、貸借対照表(B/S)上の純資産項目(資本金、利益剰余金など)の仕訳と、増資や配当などを時系列でまとめた株主資本等変動計算書(Statements of Shareholders' Equity)も重要である。上記のM&A Onlineでも純資産項目の仕訳を紹介していたりで、基礎として大切な事がうかがえる(どういう訳かこれらは日商3級に移行された)。

自分は株式会社ZOZO(3092)が株主に幾ら配当を行っているのかを人に説明するときに、剰余金が幾ら配当されているかをS/Sから読み取り、「ZOZOの前澤さんたった約50億(=87.26億円×(100-37.94)÷100)しか利益剰余金の配当しかやってないじゃん(20回定時株主総会招集ご通知)。これでTwitterで1人100万ばら撒くって、株主切れるに決まってるよな」と世間話にも使える項目である。

本題:物議の多かった大問3(3社間における連結P/L,B/S)

本題の前に連結会計とは、親会社Aと子会社Bの全ての損益計算書貸借対照表を足し合わせたものである。ベン図を頭に思い浮かべてもらうと分かるとは思うが、どうしても親会社Aや子会社Bに重複する売上や利益が発生してしまう。ならばこれらを相殺消去してしまおう。従来の日商2級ではこの相殺消去の際の仕訳と連結財務諸表との関係性や、B/Sの純資産項目の変動などがメインテーマだと解釈していた。

問題点を大学受験に例えてみる

第151回の日商簿記試験の大問3では連結会計の問題だった。この問題はあたかも数Ⅱの整関数(二次関数、三次関数など)の微分積分の触りを覚えた高校生に向かって、大学一年生レベルの偏微分、重積分の問題が出題されていたぞ!習ってねーしできねーよである。

この状況を大学入試問題で説明してみる。例えば大学入試だと、こういう場合は高校生の範囲でできるように調整する。例えば今年の東京大学の数学の理系の問2と文系の問1を見比べて見てほしい。

[理系問2]一辺の長さが1の正方形ABCDを考える。3点P、Q、Rはそれぞれ辺AB,AD,CD上にあり、3点A、Q、Rおよび3点P、Q、Rはどちらも面積が1/3の三角形の3頂点であるとする。DR/AQの最大値、最小値を求めよ。

[文系問1]座標平面の原点をOとし,O,A(1,0),B(1,1),C(0,1)を辺の長さが1の正方形の頂点とする。3点P(p,0),Q(0,q),R(r,1)はそれぞれ辺OA,OC,BC上にあり,3点O,P,Q及び3点P,Q,Rはどちらも面積1/3の三角形の3頂点であるとする。
(1)qとrをpで表し、p,q,rそれぞれのとりうる値の範囲を求めよ。
(2)CR/OQの最大値、最小値を求めよ。

この問題は辺の長さをxやyとおいて、xとyの関数を作ってその最大最小問題に帰着させて解く問題だ。辺の置き方に依っては数3の微分積分を使わなくてはならならず、数3未履修の文系の学生ではできない。これを避けるために問題の設定を文系用に書き直し、二次関数の最大最小問題(数1の範囲)に帰着させるための(1)を設けることで、範囲外になる事を防いでいる。大学入試辺りの方が出し慣れているせいか、受験生がどこまで勉強しているか?に合わせた配慮も上手い。

話を戻して

話を元に戻して、今回の日商2級の問3の連結会計の問題では、どうも受験生の履修状況に合わせた配慮やり方が下手くそだった。学習範囲外の箇所を投げっぱなしの状態だったためか、受験生が「?」となりやすい個所があったようだ。自分の場合は問3の3.で少し迷った。

X3年度末とX4年度末に連結子会社S1社が保有する商品のうち親会社P社から仕入れた商品は、それぞれ120,000千円と150,000千円であった。P社がS1社に対して販売する商品の売上総利益率は、2年とも30%である。(仕訳できる方は仕訳してみてください。)

これは未実現利益の消去(ダウンストリーム)というもので、2社間で売買が行われた商品の利益分を消去するもの。これを仕訳に直すと、

[1] X3年度の未実現利益の振り戻し:(商品) 36,000 (売上原価) 36,000
[2] X4年度の未実現利益を相殺消去:(売上原価) 45,000 (商品) 45,000

[1]は試験終了後の解答速報で先生が「一級の範囲だけど・・・」と言って教えてくれたもの。まあ「数3になったらやるよ」というもの。せめて問題文に「X3年度の処理は未実現利益の消去の仕訳の貸借を逆にし、翌期首に振り戻す処理が必要であるが未処理である」位の、数2の知識で行けるようなフォローは必要な箇所だと思う。

要は数2までしか知らなかった自分に取っては、試験中「X3年の条件ってどう使うんだ?」となったものだ。とりあえず今回の試験としては、こういったミスリードを誘発する箇所も多く、受験生や予備校の先生がブチ切れる結果となった。

今後

ここまでの発言ををまとめると、以下の3点にまとめる事ができる。

●仕訳がP/L、B/Sのどの部分に対応しているか?を意識することは大切
連結会計が出題される背景としては、企業の買収売却が目立つから
日商簿記2級は、受験生の履修状況・時間配分を考慮した問題作成が下手

特に最後の項目は、受験生からすれば範囲外から来られると、何を勉強していいかが分からないのも怖い。流石に何度も落とされるのもよくないので、全経一級に変えようか悩む所だ。