Aggressive Style 5

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Aggressive Style 5

昨今はコミケ関係を中心に書いています。同人やニコニコ動画方面で活躍される方の相互リンクをお待ちしています。

高校数学、法律の範囲で確認しておきたい「集合」

実験

高校数学や法律を条文を読むのに役に立つ知識として集合があります。まず集合とは1から10までの自然数の集まりのように、それに含まれる「もの」がはっきりしているような、「もの」の集まりを集合。集合に含まれている1つ1つの「もの」を,その集合の要素といいます。このとき集合とは以下のように定義されます。集合の定義の仕方は二種類あり、A=\{1,3,5,15\}のように要素を列挙した定義を外延的定義。A={xは偶数である}と言うような定義を内包的定義と言います。尚要素Xが集合Aに属する事をX \in Aで表す事にします。

第1章:和集合A \cup Bと共通集合 A \cap B

まず和集合A \cup BとはAまたはBどちらかに含まれる集合の事、共通集合 A \cap BとはAとBの両方(AかつB)に含まれる集合の事を指します。図で言う赤と緑の部分がA \cup B、オレンジの部分が A \cap Bとなります。




さて法律の条文を読まれる方は「又は」「かつ」という言い回しに頭を抱える方もいるかと思います。例えば労働基準法七十五条を見てみましょう。


(療養補償)

第七十五条  労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。

こじつけて労働者を業務上負傷した事象をA、労働者が疾病にかかつた事象をBとしましょう。このときAまたはBのとき、必要な療養を行わなくてはならなくなります。さて「または」なので「かつ」も含まれていて、労働者を業務上負傷かつ疾病の両方かかつた時 A \cap Bにも、必要な療養を行わなくてはならない事が分かります。このように、ベン図や集合を意識して法律の条文を読むと良い事があります。ここからは以下の問1を解いて和集合と共通集合の考え方に慣れて行こうと思います。

問1



解答

まず境界y = x^2 -x,y = 2xの共有点は(0,0)と(3,6)の2点である。 A \cap B,A \cup Bのいずれの場合においても境界を含む。



 A \cap B

A \cup B

このように和集合A \cup Bの指し示す領域と、共通集合 A \cap Bの指し示す領域は違います。天下り的ですが数IIの教科書で出て来る「連立不等式y  \geq x^2 -x,y  \leq 2xの示す領域を図示せよ」と言うのは、この場合で言う A \cap Bを求めている事になります。そもそも方程式と言うのは、方程式を満たす集合を求める作業ですし、連立方程式、連立不等式と言うのは複数の方程式や不等式の解の共通集合を求める作業である事にご注意下さい。

第2章:否定と補集合\bar{A}

補集合とは全体集合Uが有り、その部分集合Aがあるとき、Uの部分集合の内Aに当てはまらない部分集合\bar{A}を差します。平たく言うと「Aの否定」に当たる集合がこの補集合に当たります。これは下の図でいう黒い部分に当たります。



法律の条文を読まれる方は「(〜の場合は)この限りでない」「〜の場合は適用しない」という否定形の言葉に頭を抱える方もいるかと思います。例えば労働基準法第三十五条を見て見ると早速「適用しない」と言う、悪魔の言葉が登場します。


(休日)

第三十五条  使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。

○2  前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

今回もこじつけて集合を使ってみます。上の図をにらめっこしながらお読み下さい。まず使用者が四週間を通じ四日以上の休日を与える事象をU、使用者が労働者に毎週少くとも一回の休日を与える事象をAとします。このとき一週間に少なくとも一回休日を与えると言う事は、四週間で少なくとも四日休日を与える事になるため、A \in Uとなります。このとき規定が適用されない事象は四週間で少なくとも四日休日を与える事象の内、一週間に少なくとも一回休日を与えない事象になります。つまりこれはAの補集合\bar{A}に当たる事がわかります。このように否定とは補集合の事で、ある条件の当てはまらない集合となります。

問2:補集合

一方数学の確率では余事象と言って、補集合を満たす事象の確率を求め、それを全体から引く事で問題が解ける事があります。



解答

(A):おなじみの表を作ってやります。一回目の出目aを横、二回目の出目bを縦として表を作成する。このとき条件を満たす(a,b)の組は、(1,5),(2,5),(3,5),(4,5),(5,5),(6,5),(6,5),(5,4),(5,3),(5,2),(5,1)の11通り見つかり、p_2 = \frac{11}{36}(答)

(B):さいころの出た目Xの積が5で割り切れる為には、少なくとも一回5が出ればよくこの事象をAとする。このときP(A)を求めるために余事象を考える。つまり5以外の出目がn回出る事象の確率を考え、P(\bar{A}) = (\frac{5}{6})^nとなる。以上よりp_n = P(A) = 1- P(\bar{A}) = 1- (\frac{5}{6})^n(答)

第3章:帰納的に考える事と演繹的に考える事

最後は本題から離れて、大学受験生向けの練習問題を紹介します。大学受験に役立つ話も盛り込んだので、是非是非読んで帰って下さい。



解答



n=4のとき

n=5のとき



尚[x]はxを超えない最大の整数を表します(ガウスの記号)。k,nを自然数として、1からkまでに含まれるnの倍数の個数は[k/n]となります。本問ではその不等式になり、「実数xと整数nについて、[x] = n\Leftrightarrow n \leq x < n+1という性質を利用しています。問題を解いてやるとn(A_m \cap B_m) = kとなるmの値は2の剰余類全てで、常に2個である事も分かります。

例えば「山梨大学2012年後期*1」の問題のように、集合で記述してある場合は集合の理解があるか出題者は試しています。あと集合の問題は問題集等でも原題を言い換えて掲載される場合があり、出題者の意図と異なる問題を解いている場合があるのでご注意下さい。

帰納的に考える事と、演繹的に考える事

帰納とは「個々の特殊な事実や命題の集まりからそこに共通する性質や関係を取り出し,一般的な命題や法則を導き出すこと」。それに対して演繹とは「[deduction]諸前提から論理の規則にしたがって必然的に結論を導き出すこと。普通,一般的原理から特殊な原理や事実を導くこと」を言います。

さて問2問3では、大学入試のように(A)で帰納的な例を提示し、(B)で演繹的な例を提示させる構成となっています。さて(B)になったとたんに難しいと思った方もいると思います。これは(B)は問題に潜む規則に気づかないと解けなくなっていて、演繹的に物事を考える事が必要となるからです。問2,問3では意図的にそのような状況を作り出し、解答者にその状況を体験してもらう目的で作成しました。

話変わってこれを会社に例えます。例えば各問題の(A)のように、規模が小さいうちは帰納的に全体を見る事が可能です。しかし(B)のように規模が増えると、どちらかと言うと一般的演繹的に全体を見て行く場合が多くなります。そこで今までの例を一般化したり、データなどから新しい規則を発見したりして、様々な状況に対処していく必要が出て来ます。

昨今では統計学などの知識を活かしてデータの全体集合を、いくつかの部分集合に分類する規則を発見する手法が注目を浴びています。こうした手法の一つにデーターマイニングと言うものがありますが、読者の皆さんがこういうジャンルに興味を持つきっかけになればと思う限りです。

参考文献

冒頭の集合の説明は「集合の方法:青空学園数学科」から取ってきました。分かりやすい説明をしている先生に非常に感激させられます。

*1:青空学園数学科より